日本の伝統的な食の知恵 Vol.8

発酵食品のパワー
     
 発酵食品は、食材を微生物などの作用で発酵させることによって加工した食品です。日本の伝統食品としては、納豆、醬油、味噌、漬物、鰹節など、世界ではパンやヨーグルト、紅茶、キムチなどがあります。人類の歴史においては有史以前から存在していた長い歴史があり、現時点で確認されている考古学的に最古の発酵食品は約8000年前のコーカサス地方(現在のジョージアにあたる場所)のワインです。

 古代中国の発酵食品としては魚醬・醬油などの原形である醬(ひしお)というものが紀元前11世紀頃の周王朝の『周礼』に記載されていて、すでに食べていたことが窺えます。我が国へは、中国や朝鮮半島から伝わり奈良時代以降に本格的に醬油や味噌が造られるようになりました。

 我が国は南北に非常に長い島国で、そして太平洋側、日本海側という異なった気候の地域を持っています。したがって、地域によりたくさんの特徴ある野菜が、旬という美味な時期を私たちに与えてくれます。長い歴史の中で日本人は、この収穫物の美味しさを一年中保存できないものかと考え、漬物などという保存法を工夫しました。貯蔵を主とする発酵加工食品は北海道から沖縄まで全国にたくさんあり、その地方独自の食品を造って食べています。

 穀物加工品の納豆、味噌やパン、大根、白菜、キュウリなどの野菜を塩と麴菌とで乳酸発酵させた漬物、魚介類加工品の鰹節や塩辛、また乳製品のバターやチーズなど、食卓に上がる多くの発酵食品があります。さらに、紅茶やウーロン茶、お酒などの飲料もあります。穀物や果物を発酵させて製造される酒は、漢方では「百薬の長」といわれて、殺菌作用を持つと同時に精神高揚作用、食欲増進などの作用があります。ただし、酒は飲み方次第で毒にも薬にもなります。緑茶を含むお茶には抗菌・解毒作用、疲労回復・強心・利尿・肥満抑制作用やリラックス・安眠作用、さらに脳神経保護作用もあります。食事を楽しむために最初にお酒を飲み、食後の寛ぎの一服としてお茶を飲むことは理にかなったとても良い食文化だと思います。
池上文雄プロフィール:薬学博士・薬剤師。千葉大学名誉教授・特命研究員。一般社団法人日本薬用機能性植物推進機構理事、一般社団法人日本国際薬膳師会顧問。専門は薬用植物・生薬学や漢方医薬学。「地球は大きな薬箱」をモットーに、薬学と農学の融合を目指し、健康科学を研究。著者・監修に「不調を食生活で見直すためのからだ大全 NHK出版」「図解 山の幸・海の幸 薬効・薬膳事典 農文協」など。

<掲載履歴>
vol.1 食は薬なり vol.7 ミネラルパワー
vol.2 日本人の健康と食事  
vol.3 野菜も薬なり  
  vol.4 旬の食材を楽しむ  
  vol.5 食べ物の性味  
  vol.6 食材の栄養成分  
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