日本の伝統的な食の知恵 Vol.13  

海の幸の薬効〈昆布〉
     
 和食に欠かせない出汁(だし)、その代表でもある昆布、その和名はアイヌ語のコンプまたクンプがコンブになったものと考えられています。コンブはコンブ科に属する数種の海藻の一般的な名称で、葉の長細い食用のものがコンブと呼ばれる傾向にあります。食品など日常的には昆布の表記が使われます。

 北海道沿岸を中心に三陸海岸などにも分布し、寒流の親潮海域を代表する海藻であり、また重要な食用海藻であるだけでなく、大きな藻場を形成し多様な生態系を保つ働きもあります。水産物として価値が高くて重要なものに、マコンブ(真昆布)、オニコンブ(羅臼昆布)、リシリコンブ(利尻昆布)、ミツイシコンブ(日高昆布、三石昆布)およびガゴメコンブ(籠目昆布)などがあります。

 可食部(藻体)は、タンパク質、脂質、糖質、ミネラルのカルシウム、リン、鉄、マグネシウム、銅、亜鉛、ナトリウム、カリウムなど、カロテノイドのフコキサンチン、粘質多糖類のフコイダンやアルギン酸などが多く含まれます。人にとって必須元素であるヨウ素も多量に含まれています。乾燥した昆布の表面の白い粉は糖アルコールのマンニットで、なめると甘い成分です。タンパク質を構成するアミノ酸は約20種類以上もあり、昆布のうま味成分はグルタミン酸です。

 豊富な食物繊維や鉄分、カルシウムなどを含み、またラミニンやカリウムには高血圧・動脈硬化を予防する作用があるので、健康食品として人気が高い食材です。塩分の摂りすぎは動脈硬化の原因となりますが、昆布の多量のカリウムは塩分の塩化ナトリウムを分解、塩化カリウムとなって排泄されますので、昆布をなるべく多く摂取することをお勧めします。鉄やマグネシウムなどのミネラルはホウレンソウ以上に含まれています。さらに、フコキサンチンには抗腫瘍・抗細胞増殖作用があることが明らかになっています。

 古くから日本各地で食べられており、昆布巻き、佃煮、おでん種など、昆布そのものを食べる料理に適しています。特に北前船の寄港地ではその地域ならではの昆布料理が誕生しました。例えば、富山県の郷土料理の昆布締め、山形県の昆布巻きニシン、北海道の松前漬けなどがあります。江戸時代に江戸佃島では、昆布などの海藻などを醬油などで煮しめた料理が多く作られ「佃煮」と呼ばれるようになりました。また、細長く刻んで刻み昆布(そうめん昆布)、表面を薄く削ってとろろ昆布やおぼろ昆布にするほか、酢コンブ、おしゃぶり昆布としてお茶請けやおやつにも用いられます。出汁をとる場合は、生昆布より乾燥昆布を使いますが、天日干しすることでうま味成分が取り出し易くなるからです。
池上文雄プロフィール:薬学博士・薬剤師。千葉大学名誉教授・特命研究員。一般社団法人日本薬用機能性植物推進機構理事、一般社団法人日本国際薬膳師会顧問。専門は薬用植物・生薬学や漢方医薬学。「地球は大きな薬箱」をモットーに、薬学と農学の融合を目指し、健康科学を研究。著者・監修に「不調を食生活で見直すためのからだ大全 NHK出版」「図解 山の幸・海の幸 薬効・薬膳事典 農文協」「食卓に活かす漢方の知恵 論創社」など。

<掲載履歴>
vol.1 食は薬なり vol.7 ミネラルパワー
vol.2 日本人の健康と食事 vol.8 発酵食品のパワー
vol.3 野菜も薬なり vol.9 健康の秘訣とは
  vol.4 旬の食材を楽しむ vol.10 至福の一杯
  vol.5 食べ物の性味 vol.11 海の幸の薬効
  vol.6 食材の栄養成分 vol.12 山の幸の薬効
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