古来より日本人の食生活は精白していない米をたくさん食べることで腹を満たし、体づくりをするタンパク質の大部分も米から摂取していました。従っておかずは少量で良く、食欲をそそるものであれば良かったわけです。ご飯に梅干しで食事が成り立つのは、そのような事情があるからです。
 米は、トウモロコシ、小麦とともに世界三大穀物です。米穀とも呼ばれて、東アジア・東南アジア・南アジアでは一般的に主食として扱われています。麦などの他の穀物に比べて栄養価が高く、ほぼ完全食であり、大量に収穫できることからアジアの人口増大を支える原動力となったといわれます。
 米穀粒の75%以上はデンプンで、他にオリゼニン、アミラーゼなどのタンパク質、ビタミンB1などを含みます。ビタミンB1やミネラルなどの栄養成分は胚芽に含まれますので、種子の全体を食べることが重要で、胚芽米や玄米がお勧めです。近年、我が国の気候にあわせたイネの品種改良が進んで、各地で天然水に育まれた個性豊かな美味しい米が生産されるようになりました。
 一汁一菜の食事の「一菜」とは野菜料理、すなわち野菜は米の副食として日本人の健康になくてはならないものです。野菜がミネラルを含むアルカリ性食品だからです。米飯が酸性食品であったから、それを中和して酸・アルカリ平衡を保つためにアルカリ食品の代表である野菜と結びついたと考えられます。野菜はたくさんのカリウムを含んでいますので、味は塩味として漬物や煮物として食べるようになりました。塩を食べてナトリウムを摂ることは生理化学的な観点からみても合理的と考えられます。
 日本人の動物性タンパク質の食べ方からも野菜の役割は大変重要です。日本人は獣肉でも魚肉でもミネラルなどを含む内臓や骨を食べないで肉身だけを食べる傾向にあります。それだけに、土に直接生えて地球の大地のミネラルをふんだんに吸収した野菜をたくさん食べる必要があるのです。
池上文雄プロフィール:薬学博士・薬剤師。千葉大学名誉教授・グランドフェロー・特命研究員。一般社団法人日本薬用機能性植物推進機構理事、一般社団法人日本国際薬膳師会顧問。専門は薬用植物・生薬学や漢方医薬学。「地球は大きな薬箱」をモットーに、薬学と農学の融合を目指し、健康科学を研究。著者・監修に「不調を食生活で見直すためのからだ大全 NHK出版」「図解 山の幸・海の幸 薬効・薬膳事典 農文協」など。


<掲載履歴>
Vol.1 食は薬なり

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