日本の伝統的な食の知恵 Vol.7

ミネラルパワー
     
 ミネラルは、私たちの体の構成成分や酵素となったり、機能を正常に保つために必須の栄養素です。カルシウム、リン、硫黄、カリウム、ナトリウム、塩素、マグネシウムといった七種類の主要なミネラル、微量元素と呼ばれる鉄、亜鉛、銅、クロム、マンガン、コバルト、ヨウ素、セレン、モリブデンなども必須ミネラルと考えられます。さらに、超微量元素としてのフッ素やケイ素、ゲルマニウムなども必要と考えられています。
 現代は、野草や山菜を食べる食習慣は消えつつあり、また日常の食事で食べる野菜などの食材もアク(灰汁)が強くないので、摂取しているミネラルが不足しています。そのため、ミネラル欠乏による疾患の増加、すなわち冷え性(症)や貧血、アレルギー、アトピーといった疾患が増えています。
自然にはセリやタラの芽、ふきのとうなど、私たちの生活に溶け込んだ春の山菜のように、おいしく食べられて健康になる四季折々の食品がたくさんあります。また年間を通して、多くの野菜や果物などが私たちの食卓を賑わしています。病気の心配をする前に、体によい野菜、そして山菜などをおいしく料理して食べることでミネラルを摂り、健康な生活を送ることができます。ただ、ミネラルに特化することではなく、野菜や豆類、穀物に含まれるビタミン類や食物繊維などの有用成分もバランスよく摂取することが大事です。
 暑い地域や寒い地域は年中同じ気温とは限りませんので、温暖な地方よりはるかに多くのミネラル量が必要です。そのことは、古くからの北や南の地方の食生活を見ると納得できます。北の地方は春の山菜から秋のキノコまで、たくさんの植物を食べてミネラルを補給します。南の地方はアクを食べてミネラルを補給していますが、沖縄などでヨモギや黒糖が食べられるのもその表われです。
大地はミネラルを豊富に含み、植物はそれらを吸収して育ちます。日本人の食生活で、不足しがちなミネラルとしてカルシウムと鉄があり、ナトリウムやリン、ヨウ素は過剰摂取が指摘されています。健康維持に必要なミネラルの種類とその働きを理解して、毎日の食事からバランスよく適量を摂取したいものです。
池上文雄プロフィール:薬学博士・薬剤師。千葉大学名誉教授・グランドフェロー・特命研究員。一般社団法人日本薬用機能性植物推進機構理事、一般社団法人日本国際薬膳師会顧問。専門は薬用植物・生薬学や漢方医薬学。「地球は大きな薬箱」をモットーに、薬学と農学の融合を目指し、健康科学を研究。著者・監修に「不調を食生活で見直すためのからだ大全 NHK出版」「図解 山の幸・海の幸 薬効・薬膳事典 農文協」など。

<掲載履歴>
vol.1 食は薬なり vol.7 ミネラルパワー
vol.2 日本人の健康と食事  
vol.3 野菜も薬なり  
  vol.4 旬の食材を楽しむ  
  vol.5 食べ物の性味  
  vol.6 食材の栄養成分  
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