 森澤 加代さん
横浜在住。フードスタイリストとして長く広告やCM撮影の料理制作、スタイリング、商品開発、コンサルタント業務に携わる。マクロビオティックや発酵食品を学ぶなかで薬膳の道へ。「自然との調和、季節のめぐりを頂く食、植物―アートな暮らし」など幅広く活動。伊豆の山の家と横浜を行き来し、年に数回、ニューヨークで現地日本人に薬膳や薬膳茶を紹介する活動も行っている。静岡瑛和学院大学短期大学部非常勤講師、国際薬膳師、ティコーディネーター

①フードスタイリストから、どのようなきっかけで薬膳を始められたのですか?
仕事は変化があり、やりがいもあって楽しかったのですが、時間が不規則だったので自分の健康の為と家族も健康でいて欲しくて、忙しい中をマクロビオティックのクラスに通ったり自然食を取り入れたり、仕事柄食の情報も多く、そんな時に薬膳を知り、長い伝統に基づく食事法をいつか学びたいと思っていました。母の介護がきっかけで、自分の今後も考え、思い切って仕事を整理し、薬膳を学ぶことを決めました。
②自然との調和やアートな暮らしとは、どんな活動ですか?
植物を使った造形やいけ花の作品を出展したりしていますが、自然の形やちからと向き合うことをテーマにしています。薬膳では季節に合わせた食事をすることが重要で、人は太陽と月の巡りに沿って自然界に生きています。どちらも暮らしの基になっています。自然の調和から作られた薬膳に、季節を表すアートなしつらいを添えた食卓は、心を豊かに体に優しく働いてくれます。そんな食卓の提案をしたり、自然から生まれる音の演奏を聴く薬膳の会、など薬膳をいただく様々なシーンで味覚だけでなく五感に働きかけることで、より良い作用になるように思います。
③ニューヨークでの東洋医学や薬膳の認知度、興味について、どのように感じていますか?
ニューヨークは多民族の都市ですが、世界最大といわれるチャイナタウンがあるのでそこへ行けばほとんどの食材や中薬が手に入ります。中医薬店では処方してくれ多くの人が訪れていましたし、薬膳の認知度は、ニューヨーク全体はわかりませんが、私は日本人を対象としているので薬膳は言葉としては知っていても、中薬のたくさん入った中国料理、のイメージを持つ人が多いかもしれません。薬膳茶や、季節の食材などで作る薬膳を紹介すると、とても興味を持ってもらえます。
④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
補気類の山芋(山薬)です。私は静岡生まれなのですが東海道丸子のとろろ汁が有名ですね。昔旅の途中旅人は消化の良いとろろ汁を食べて疲労回復して、また長い旅をつづけたのでしょうか。秋から冬にかけて、藁に半分包まれた、細長くてごつごつした山芋が売られていますがとても粘りが強く、すり鉢ですって味噌汁で伸ばしたとろろ汁が定番ですが、すりおろして蒸したり焼いたり、揚げたりと、メニューのバリエーションが考えられるのがいいですね。
⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
これからもフードスタイリストとしての経験と、薬膳の学びを生かして、楽しみながら生活の中に薬膳を取り入れる食卓提案をしていきます。そして「自然との調和」をテーマにできることをまだまだ学びながらですがやっていきたいと思います。その一つとして、伊豆の山の家の一帯は、以前は薬の山といわれたほど、薬草や薬になる木がたくさんあったそうです。今、環境の変化と獣害によって消えてしまった薬草の復活と保護を続け、また元のような薬の山になるようにしたいと思います。元の様にふえたら薬膳茶や料理に使ったりと自然の恵みを頂くことこそ薬膳、そんな近い未来を楽しみにしています。
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