薬膳インタビュー           No.052 

氣賀澤公乃さん










プロフィール:京都生まれ、東京在住。東アジア歴史文化研究所非常勤職員。1986年夫の海外研究に伴い、3か月西安市で暮らす。子供たちは現地の小学校に特別通学。1995年東京に転居。2007年国際薬膳師の資格取得と同時に、薬膳師会事業部理事を経て学術部常務理事に。以後研修会を企画し実行。その他5周年10周年15周年の薬膳コンテストや薬膳レシピ集の作成担当。「薬膳の基礎早見表シート」「8つの体質と食薬早見表(シート)」作成。猫の額ほどの狭い庭で、中薬にもなる草木を数種育て楽しんでいる。

①薬膳を学ばれたきっかけはありますか。東アジア歴史文化研究所の研究室代表で中国史専門家でいらっしゃるご主人とご一緒にお仕事されるなかでエピソードありますか?
中国語を学び始め中医学に興味を持ったのがきっかけです。夫の研究所では資料整理など地味な裏方の作業ですが、中国の大学に招聘された場合は短期同行します。その時の話で、円卓での宴会が主な北京の有名饗庁で取り回しでなく、フランス料理や日本の会席料理を参考にしたという、一人前一皿ずつきれいに盛り付けて順次出されました。日本料理店(居酒屋風)で、大学の先生方は寿司、たこ焼きや日本のラーメンなどに興味深々。人気の寿司ネタは「三文魚」(サンモン→サーモン)でした。生ものを食べる習慣は、以前は無かったと聞いていますが、今は寿司の愛好者は多いようです。店では家族で寿司を食べ、テイクアウトも出来ます。冷たいものも「冷菜」(前菜)と いってメニューにあります。共働きの人がほとんどで、男性も女性と同じように料理します。 総菜の種類も多く買って帰る人もいますが、スーパーの食材売り場もいつも人で賑わっています。最近は、国民の肥満問題が深刻なようです。中国の方に「薬膳を学んでいる」と話しをすると、「ものずきなことを」というような顔をされ、日本に来た女性の中国留学生からは「教えてほしい」ともいわれました。

②国際薬膳師会の学術部にてご尽力されていますが、今後の会のあり方をどのようにお考えですか?ビジョンはありますか?

今年で12回目のステップアップ研修会、会長講演会も一昨年から録画受講も可能となり毎回70名近くの視聴があり喜ばしいことです。これからは若い会員、全国からの発言も取り入れて、運営できればと思います。また外部に向かって薬膳を広める活動もできればと思っています。

③いろいろと薬膳を作られてきた中で、最も効果効能の高いと思われた薬膳メニューはありますか?どのような症状に対してどのようなメニューですか?
薬膳は即効果が出るとは思いませんが、これから寒くなる時期、「白身魚の大和(とろろ芋)蒸し銀餡掛け」は如何でしょう。補気類の食材を盛り込んで理気類の柚をのせて。

「白身魚の大和(とろろ芋)蒸し銀餡掛け」
(一人分)
材 料:白身魚・・・・・・・・1切れ
    山芋(大和芋)・・・・50~60g
    卵白・・・・・・・・・1/2個
    シメジ・・・・・・・・40g
    シイタケ・・・・・・・1枚(千切り)
    サヤインゲン・・・・・2本(千切り)
    ニンジン・・・・・・・2枚(輪切り)
    ゆずの皮・・・・・・・2片

作り方
1.山芋はすりおろし、卵白を加えよく混ぜておく
2.器に魚を入れ、蒸気の上った蒸し器で6~7分(強火)蒸したら蓋を開け、ほぐしたシメジとシイタケ、サヤインゲン、ニンジンを載せ、1.を上からかけ、蓋をしてさらに3分ほど蒸す。
3.片栗粉でとろみをつけた吸い物より少し濃いめの汁(銀餡)を上からかける。ユズ片をのせ 出来上がり。

④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
滋陰類温性の野菜として手ごろな価格で一年中入手できる小松菜です。炒めもの、お浸し、和え物、ナムル、お菓子になどなど。生でも可。単品で、他の食材と合わせても活用は広範囲です。

⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
「気負わずに薬膳を」最終目的は「国民一人一人が薬膳師」です。体がどんな時にどんなものを食べるのが好ましいのか、薬膳の基本を理解すれば、メニューは自分で考えられます。まずは自身の体質を知ることで「未病を治す」その目的で「8つの体質と食薬早見表」を作成しました。次に「体質薬膳学」を参考に、簡単かつ詳しく体質判断ができるシートを作りたいと考えています。それとは別に薬膳からは少し離れますが、食が摂れないときでも「中薬の香りそのもの(アロマでなく)」が体に与える効果を調べてみたいと思っています。体調が悪くて食欲もなく気分がすぐれない病人が「匂い袋」の香を聞くと、気分が晴れると「匂い袋」を常に枕元に置いていました。「良い香り」と感じるとき、気分が和らぎリラックスできることは知られています。もし個々の「中薬(食薬)」の香りそのものが、呼吸(鼻や口、皮膚)から体内に入り、帰経に基づき効能を少しでも期待できるなら素晴らしいことで、調べてみたいと思っています。が、まだ答えは見つかっていません。

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