 平尾安基子さん
埼玉県在住。幼少期から虚弱で食が細かったため、漢方薬が身近にあった。1989年に父の転勤に伴い中国福建省アモイ大学へ留学。現地での中医学の治療に効果を感じ、薬膳料理の美味しさに感動。中国での経験が薬膳を学びたいきっかけとなる。帰国後10年ののち、本草薬膳学院と出会い一期生として入学、学院卒業後、研究科で学びながら本草薬膳学院で事務兼講師として働き始める。現在、中医薬膳師平日コース(理論)、スクーリング(理論)の講師と通信教育コースの添削を担当。東京誠心調理師専門学校、NHKカルチャーなど他多数の講座担当。小冊子「医食同源」、「なごみ」にレシピ提供。『薬膳素材辞典』『一語でわかる中医用語辞典』など共著多数。『読むサプリ』(冷え性とむくみ改善の薬膳)執筆。本草薬膳学院講師、国際薬膳師、国際中医師、国際茶藝師、交流部副部長

①中医治療の効果や、薬膳料理の美味しさに感動されたとのことですが、どんな体験をされたのですか?
生理痛で悩んでいたので、街角の薬剤店で中医師の先生に診ていただきました。煎じ薬の中薬の量は日本の2~3倍もあり、まず3日分処方されました。3日で変化がなければ、処方を調整します。それと同時に中医鍼灸の治療もしていただきました。長い針を使い、深く刺し入れる技術は、経穴にズーンと響きました。直後に迎えた月経は何の痛みもなく、正常であれば生理痛はないのだと初めてわかりました。また、薬膳レストランで食事をする前は、薬臭いけれども身体に良いなら我慢して食べようと思っていましたが、いい意味で裏切られました。とても美味かったので、「薬膳を習ってみたい!」と強く思いました。
②教える立場になられて薬膳に対する姿勢はどのように変わりましたか? 辰巳会長は「身に着けたいなら、教えるのが一番」とおっしゃいましたが、その通りでした。習っていた時の何倍も勉強し、講師用の自作のテキストも毎年更新しています。学生の方のご質問は、私が気付かなかったことを気付かせてくださいます。曖昧な回答はできませんので、教科書を読み返し、北京中医薬大学の教科書や古典を紐解く機会も増え、研究科でも学び続けています。中医学を学ぶのは楽しいので続けられているのだと思います。通信教育コースのレシピ添削では学生さんから厳しいと言われます。不合格とは書かずに再提出とし、合格するまで続けます。ご自身で薬膳レシピを作る力をつけていただきたいため、ヒントは書きますが、回答は書きません。徐々に力がついてくるのがわかるので良かったと思っているですが、学生さんからは恨まれているようですね(苦笑)。
③現代人にとって、中医学(薬膳)のどこが役に立つと思いますか?
本格的な高齢化社会を迎え、予防医学=「治未病」が重視されています。それには中医学の持つおおらかさが役に立つと思います。数値だけではなく自身の感覚を大事にすること。自然や環境の変化を感じ、心身の声を聞いて食材を選ぶ薬膳は、情報が多い現代では、かえって見直されるのではないでしょうか。
④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」とうたわれる狭山茶です。交流部の催しで埼玉県の博物館見学と茶葉の手もみ体験を通じ、狭山茶のファンになりました。緑茶は、清熱類ですので、夏や熱証の方にはお勧めです。また、茶葉を発酵した紅茶は身体を温めるので冬や寒証に、半発酵(途中で発酵を止める)の青茶(烏龍茶など)は平性なので春秋にと、一年を通じて手軽に薬膳として楽しむことができます。
⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
20年前はご自身やご家族の健康のために薬膳を勉強される方が多かったのですが、最近は薬膳を仕事にしたいという方が多くなりました。薬膳教室を開いたり、SNSで発信したり、教えたいという方と勉強会を開いて、楽しく学び続けることができると嬉しいです。そして多くの方にわかりやすく中医学の面白さをお伝えするのが役割かなと思っています。薬膳以外には、旅行が好きなので、コロナが落ち着いたら出掛けたいです。夫と日本一周できたらいいねと話しています。旅先で土地の美味しいものをいただくのも楽しみのひとつです。 |