 北里多恵子さん
さいたま市在住。大家族の中で育ち祖父母から漢方薬、季節の郷土料理を学ぶ。自宅で20年以上「パン教室」を開き、毎月のパンと副菜は同じものを出したことがないのが自慢。地元の公民館、カルチャーセンターで、パンや料理をはじめ韓国紐結び、薬膳料理を教える。食べる人の体調に合わせて元気になるメニューを作ること、気軽に薬膳を実践できることを伝えたいと活動している。国際薬膳師

①薬膳を勉強したいと思ったきっかけは何ですか?また、祖父母さまから漢方薬、季節の郷土料理を学ばれたそうですが、どのようなことですか?
勉強したいと思ったのは、友達から誘われ、教室を訪れた時、懐かしい漢方薬の香りに気持ちが落ち着き、学んでみたいと思ったからです。祖父母が煎じる漢方薬の香りも好きでした。それと、母方の祖母を手伝って作った山菜や菊花の酢の物、イナゴや蜂の子の佃煮など、東北の農山村料理。捻挫に小麦粉を酢でといた湿布、疳の虫にユキノシタのしぼり汁、のど風邪に焼きネギの温湿布、咳にハチミツ大根、冬の焚火の黒焼きミカン、高熱にミミズを煎じた粉末、モグサのお灸、紫根の軟膏など、都会に住みながら、時代を逆行するような民間療法。今思えば、錠剤ひとつで済むようなことを、いろいろ手をかけてくれていたのだと感謝しています。
②大家族の中で、食材を選び、家族の体調にも合わせてメニューを考えるのは大変と思いますが、どのように工夫されているのですか?ご家族の反応はいかがですか?
3歳から90歳までとなると、家族のひとり一人の体調にきっちり合わせるのが難しいので、不調についてはそれぞれが自分の力で解決できるよう美味しくエネルギーの補充がとれるように考えています。美味しいというのは「味が良い」だけではなく、今、身体が欲しがっているものを与えてあげることで、美味しい、食べたかったものだと思えるものだと…。 例えば、夏、公園で遊んだ後は、豆乳ソーメンに副菜はほうれん草のハチミツ入り胡麻和えなど、熱を冷まし、発汗した水分を補い、補益するメニューなどです。
③カルチャーセンターなどで薬膳を教えられ、気軽に薬膳を実践できることを伝えたいとのことですが、具体的にはどのようなことを考えていらっしゃいますか? カルチャーでは、「今日は疲れたから、ウナギでも食べよう」とか、「昨晩飲み過ぎたから、お昼はざるそばに」というのも、広い意味での薬膳なので難しく考えずに、まずは自分や家族の体質、その日の体調を知り、余計なストレスを与えずに身体が「待ってました」と喜ぶ料理を作りましょう、と呼びかけています。特に、五気のバランスを大切にしています。(冷たすぎて温めなければ、熱くなりすぎて冷まさなければ、というムダのないように)
④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。 葱白、白ねぎは、埼玉県の特産物でもあり、薬味としてはもちろん、火を通すことによる甘味はやさしく、夏でもクーラーなどで冷え過ぎ、無汗になることも多い現代人には、頼りになる食薬だと思っています。
⑤今後は、どんな未来図をお持ちですか?
「スーパーがわたしのドラッグストアー」 身体の不調を感じたらドラッグストアーで薬を買うのではなく、スーパーの食品売り場で、適切な食材を選び、メニューを考える。例えば、青菜を使った副菜も、暑い時ならほうれん草のおひたし、寒い時なら小松菜の煮びたし、疲れ気味なら…、風邪気味なら…。食べる人の様子を思い浮かべながら、ササッとメニューを考えられる、特にお母さんが増えればと思います。病気になった時、気力も必要ですが、病気と闘える力を日頃から無駄に消費せず、どれだけチャージできるか、食生活によるところが大きいと思います。 |