 伊藤寛子さん
神奈川県三浦市在住、小学校で初めて栄養士が配置されるようになった年に横須賀市の小学校に勤務。子供と接しながら献立作りや栄養指導を8年間行う。その後6年間は三浦市の有料老人ホームで専門料理のシェフと食事づくりを行い、済生会若草病院で栄養科長として治療食や栄養指導、栄養サポートチーム(医師・看護師・言語療法士・検査技師・薬剤師・管理栄養士)の一員として、病室を回り、患者の状態に合わせた点滴・濃厚流動食の栄養量管理、ミキサー食・ゼリー食、ソフト食の開発などを行う。退職後は検診センターで検査結果を見ながら生活習慣病等の栄養指導を行った。病院勤務時代に薬膳を学び始め、現在は薬膳健康づくり研究会の講師を担当。また三浦市の市民センターで薬膳料理の講座を担当するなど薬膳に携わっている。管理栄養士・国際薬膳師。

①長年にわたり管理栄養士のお仕事をされ、その後に薬膳を学ばれていますが、
何かきっかけはありましたか?
管理栄養士としての仕事では、カロリーやタンパク質、塩分などの栄養素の数値を基に献立を立ててきました。しかしこれらの事だけでなく、人が長い年月命を繋ぎながら獲得した、健康と食べ物に関する知恵があるのではないかと考えるようになりました。そして、食材が持つそれぞれの特有の力について知りたかったことと、糖尿病や腎臓病などの食事指導に、知識を深め生かしたいと考えたからです。
②小学校と老人ホームと病院と、幅広い年代への仕事をされていますが、年代の違いにより
気遣われた点や類似や相違点はありましたか。
共通点は:食品・調理室・器具のなどの衛生管理やアレルギー対策。「美味しかった」と思ってもらう献立の工夫。季節や行事に合わせた献立作り。出来るだけその土地の食材を使う。相違点は:小学校では初めて集団で同じ食事をする事で育つ食事に関する大切な習慣を身につける。:病院や老人ホームでは年齢や病気の種類、病状など個々に応じた献立と形態。そして栄養指導。
③治療食で、点滴・濃厚流動食、ミキサー食・ゼリー食、ソフト食などの開発をされたそう
ですね。一般には聞き慣れない食品ですが、どんなものか、また開発エピソードは
ありますか。
栄養サポートチームでは①低栄養・褥瘡(床ずれ)②胃瘻・腸瘻・経管栄養(濃厚流動食)・③中心静脈栄養(点滴)などの患者さんの栄養状態を把握し、患者さんに合った栄養量を供給できているか診断します。①の口から食べられる患者さんは飲み込みの状態に合わせて、食材の大きさ、固さを配慮します。嚥下の状態は個々違うのでゼリー状か歯茎で噛める(ソフト食)が良いかなど多種類が必要です。初めは全部ミキサーにかけてトロミ剤を混ぜていましたが、色も形も普通食に近づけていきます。術後やリハビリの状態にも応じて変えていきます。栄養状態が改善して白髪だった髪が根元から黒髪が出てきたり、褥瘡が良くなったり、チュウブが抜けて口からゼリーが食べられようになったり、医療の中での食事の重要性がより認識され栄養士としての働きがいを感じました。
④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
カリフラワーです。冬でも温暖な気候の三浦半島では、1昔からこの時期には大根やキャベツの栽培が盛んに行われてきました。最近ではカリフラワー、ブロッコリー、ロマネスコなどの畑も見られます。カリフラワーは平性・甘味で腎肝胃に帰経し、脾胃虚弱や補腎強筋の作用があります。生や茹でてサラダに、焼いたり、煮たり、炒めたりしますが、ピクルスにしておくと便利です。また最近ではお米のかわりに食べるカリフラワーもあるそうです。
相模湾や雪を頂いた富士山を遠くに眺めながらのウオーキングでは、季節の移り変わりと野菜たちの成長に気づく事も喜びのひとつです。そして、これらの野菜が無人販売所に並ぶのが楽しみになります。
⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
近所では子供たちが巣立ち老夫婦や一人暮らしの家が多くなってきました。趣味で陶芸をしているので、その器でご近所や仲間と持ち寄り昼食会ができる場を作れたらと思っています。 |