 三宅弘美さん
神奈川県川崎市在住 大学病院栄養部を16年勤務。業務とともに「IBD友の会」(炎症性腸疾患患者会)を支援。「真空低温調理」を病院給食に提案する企業、神奈川県の精神疾患治療センター病院、リハビリ療養病院を経験。その後横浜市内、東京国立市の介護老人保健福祉施設に務めたのち、現在は横浜市内にある「特別養護老人ホーム」で管理栄養士として就労中。通算35年栄養士業務に携わる。研究会所属講師として地域の薬膳健康づくり教室を担当。管理栄養士、国際中医師、国際薬膳師、国際薬膳調理師、色彩検定2級等

① 管理栄養士としてお仕事をされながら「薬膳」を勉強されたきっかけは何ですか?
栄養指導は「その方のニードを捉える」ことが重要です。結婚した私も新たな家族の健康を維持するために、時間に追われてもきちんと食べたい、病気にならないように積極的に食べたいと思っていました。いつか薬膳を学びたいと考えていた矢先、短大時代の恩師に再会、研究会に所属したのが始まりです。いざ勉強が始まると、「五味五性」などそれまでの栄養学とはちがう食材のとらえ方に感銘し、すっかりはまりました。好きなことだと時間の経つのが早く、疲労も吹き飛ぶ、楽しい時でした。時間のやりくりは大変でしたが休日を利用するなどなんとか継続しています。管理栄養士が食べることを説くうえで、薬膳の考えを学ぶことはより奥行きのある、オーダーメイドの指導に結び付くと思っています。
② 特別老人ホームの栄養管理はどのようなことが重要視されるのでしょうか?
薬膳は取り入れていますか?
「治療」より「生活の場」であることを重視する施設です。必要な栄養量を「安心、安全に」提供することが大事ですが、「しっかり噛む、飲み込む」ことができない超高齢の方も多くミキサーやゼリーに加工すると「見た目なんだかわからない」と言われてしまいます。お食事時、ご利用者とお話し説明、納得していただくのも仕事。また食事は楽しみの大きな要素なので、嗜好やなつかしい味を聞き取り、おやつや料理に反映させます。調理は委託会社が行いますが、協力し最近は手作りおやつ「きなこアイス」が好評でした。ご利用者の様子は「四診」を活用し「最近、元気ないな」「舌が細く真っ赤」「歯が抜けた」「便秘」「褥瘡」など情報を頭に入れて、栄養ケアに臨んでいます。
③ 地域の薬膳づくり教室では、どのようなことを教えていらしゃるのですか?
どのような年代の方々が、薬膳のどのようなことに興味を持たれて参加しているのでしょう?
講師歴は2年目ですが、10年以上学ばれているクラスでは、季節や産地の身近な食材を生かした薬膳を主とし、理論や食材・献立の説明後調理実習します。年齢は幅広く30歳代~80歳代の方々で、ご自身や家族の体調管理のため学ばれています。もう一つは初級クラスで、20歳代~70歳代の方々。このコロナ禍や食育、鍼灸師の経験を生かしたいなどの理由で薬膳を選んでいるので、「基礎の理論」と調理実習で構成、授業を行っています。
④ 食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。 「さつまいも」です。益気健脾の作用があり、甘く優しい味は、好きな方も多いはず。特養のおやつでも手作りスイートポテトや干し葡萄との甘煮は大人気です。ビタミンCや食物繊維も多く便秘にも効果があるのもポイントです。子供のころはふかし芋が定番おやつでしたが、今やスーパーに焼き芋コーナーがあり、コンビニで干し芋が売られ、より身近になりうれしく思っています。
⑤ 今後はどんな未来図をお持ちですか?
義妹が太極拳の指導をしています。私の薬膳と合わせて、「楽しく体を動かし、薬膳を学び、おいしく食べて健康を維持する」をテーマに、集える場所を運営できたらいいなと思っています。まだまだまだ先の話です。 |