薬膳インタビュー           No.023 

水谷洋子さん










名古屋在住。薬学部を卒業後、大学医学部法医学教室に勤務。名古屋で市民活動にも関わり、国際人権活動団体アムネスティ会員、名古屋NGOセンター理事及び会報編集委員長を経る。2013年に名古屋の異国スポットを紹介する“食べ歩き「名古屋で世界旅行」”を編集執筆し出版。定年退職後、北京中医薬大学日本校(現日本中医学院)、上海中医薬大学付属日本校にて資格を取得。本草薬膳学院で辰巳ゼミナールに参加。現在、名古屋で展開する薬膳講座「元気幸房」に関わる。また、障がい者(精神、発達障害)自立支援組織において、食・薬膳の講座を担当。薬剤師、医学博士、国際中医薬膳師、国際中医師


①なぜ、薬膳を勉強しようと考えたのですか?
高校時代に膝を怪我したことで、年齢を経るにつれ膝に水が溜まるようになりました。病院で定期的に膝から水を抜くという状態に、何か手立てはないかと自分なりに調べて防己黄耆湯という漢方薬が使われることを知り、整形外科の先生に提案して処方していただくようになったのが漢方薬の出会いです。薬剤師ではありますが、当時の大学の漢方の勉強といったら生薬の味をみて効能とラテン名を覚えるという程度でしたし、本来の漢方・中医学の知識はほとんどありませんでした。もともと料理好きでしたので、中医学の考え方に基づいた薬膳を知りとても魅力的に感じました。

②「名古屋で世界旅行」という食べ歩き本を出版されたり、中医学や薬膳の活動など、
 多方面でのご経験をとおして、今、どんなことを感じていますか?

名古屋で市民活動に関わってきましたが、その中で在日外国人の方々の出会いも多く、彼ら彼女らを知ることで、世界の見え方が変わり日本の見え方も変わりました。「名古屋で世界旅行」は市民活動で出会った人たちや日本で働く外国の方たちの協力で出来上がった本。名古屋周辺の異国スポット満載ですが、現在は閉店しているお店もあって少し残念です。その国の風土にあった食材、スパイスの使い方、料理の仕方、美味しさの追求もとても面白い。まさに因地制宜です。

③障がい者自立支援組織で食・薬膳の講座を担当されていますが、食と自立について
 どのように指導されているのですか?

知人が10年ほど前に障がい者就労移行支援事業所を開設し、何かお手伝いができないかと「食」に関する講座の一環として薬膳の講座を始めました。主に精神障害、発達障害を抱え、なかなか社会生活になじめない、働きたいけどうまくいかない…といった悩みを抱えている方たちのサポートです。朝食を摂らない、インスタントのもので済ます…。そして行きたくない、“ひきこもる”ということになりがちです。まず生活を立て直すことからとなりますが、食生活もとても重要になります。不眠、下痢、自律神経の不調などいろいろありますがテーマを決めてお話しし、食べ方、オススメの食材を紹介します。そして、一日の始まりにちゃんと動き出せるように朝はごはん(できればお粥を)をしっかり食べましょうと勧めています。
最近はオンライン講座になっていますが、これがまた対面よりも反応が良かったりして面白いなと思っています。

④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
これからの季節、とうもろこしが美味しいですね。身近で和洋中、様々な料理に使いやすい食材です。美味しい時期に茹でて冷凍しておくこともできますし、缶詰やフレークなども使い勝手がいいと思います。水分代謝を整えて、気をしっかり補ってくれるので、梅雨時にはぴったりの食材です。更にヒゲも南蛮毛という利尿作用の高い生薬にもなります。このヒゲも刻んで卵焼きやお味噌汁やスープに入れてしまいます。

⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
中医学は学べば学ぶほど、その奥深さに魅了されます。中医学に造詣の深い先生方の世界観に触れることもわくわくしますし、さらに知識を深めたいと思っています。こうしたインプットと同時にアウトプットとして、これまでの知識や経験を生かして自宅で薬膳サロン、研究会を展開したいと思っています。薬膳に関わることで出会ったご縁を大切に、これからは薬膳を楽しみたいと思います。

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