薬膳インタビュー           No.022 

藤本悦子さん










香川県在住。大学卒業後、大手製薬会社学術部勤務。結婚を機に退職。出産後、漢方薬局に勤務。保険薬局として病院の処方箋調剤に携わる。香川県から毎月本草薬膳学院に通学し薬膳師の資格を取得。ハーバルセラピストとしても活躍中。2019年の特別講演会で薬膳茶を提案し事業部の販売活動に協力。「hinaの気まま薬膳学」ブログを発信。薬剤師としての視点から漢方と中医学について情報を伝えている。薬剤師、ハーバルセラピスト、国際薬膳師、国際中医師


①薬剤師のお仕事から、薬膳を学ばれたきっかけはありますか。
仕事柄、生薬や漢方薬はいつでも手に触れられる環境にありましたが、当時の私は漢方に全く興味が無く、ましてや「中医学」や「薬膳」がどういった物なのかも知りませんでした。そんな私が8年前に「メディカルハーブ」という言葉に惹かれてハーブの勉強をしたのを機に薬草についてさらに深く知りたいと思い、たまたま検索で見つけた辰巳先生の「薬膳の基本」を購入、そして先生が教えていらっしゃる本草薬膳学院に入学しました。

②西洋医学と東洋医学をどのような考え方で接していられるのでしょうか?
細菌感染症やインフルエンザ、不眠、体の痛みなど西洋医学にはその分野の特効薬があります。
最近では新型コロナウイルスの薬も猛スピードで承認され、そのおかげで多くの命が救われています。東洋医学は即効性を求めるというより、体のバランスを整えて少しずつ体質を改善の方向に向かわせます。東洋医学も証を見極めることができれば改善に導くことができますし検査データではわからない不調が治ったり、長年の不妊の悩みが解消されたりすることもあります。
不調を訴える方の多くはストレスや睡眠不足、過労、飲食不節、生活習慣などが関与しています。西洋医学と東洋医学のどちらも利点がありますが生活習慣の改善や薬膳の知識があれば未病の段階で防げる病も多いと思います。

③ハーバルセラピストとはどのようなお仕事ですか。薬膳の考え方と近いところはありますか。
ハーバルセラピストというのは30種類のメディカルハーブの知識を有する資格です。西洋のハーブも様々な不調を和らげることができます。薬膳は体の陰陽のバランスを重視しますが、メディカルハーブは植物の持つ成分に着目しその相乗効果を期待しながら香りを楽しむことができます。ハーブティーだけでなく外用や芳香浴、エッセンシャルオイルといった楽しみ方もありますし健健康品にも利用されていて、私は免疫を高めるハーブを皆さんに勧めています。発汗させたり利尿させたり気持ちを落ち着かせる働きを利用する点は薬膳とよく似ています。

④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
「粳米」です。辰巳先生が、「毎日食べても良い物は平性になっています。お米も毎日食べる物ですから平性です。」と教えてくださったことに対し大きく頷きました。ご存じの方は少ないかもしれませんが、粳米は白虎加人参湯や麦門冬湯という消渇の方剤、漢方薬に使われています。また不安やイライラを鎮めるGABAや生命維持に不可欠な糖質も含まれています。体調が悪い時や赤ちゃんの離乳食でも消化の良いお粥を食べますし、酒、醤油、味噌、酢の原料でもあるお米は毎日必ず口にする大切な食薬ですね。

⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
薬膳や中医学、漢方についていろいろな形でお伝えしたいと思います。中医学から独自に発展した日本の漢方は中国と生薬名が違うものや混乱するものも多くあり、情報を発信している方が中医学の話をしているのか漢方の話をしているのかを理解しなければいけません。また適応症から漢方薬を選択する病院の処方は中医学と考え方が若干違います。薬機法の規制があり薬膳料理に使えない局方生薬もあります。もちろん地産地消で身近な食材で作る薬膳が一番の薬膳ですが。
薬剤師の視点から中医学と漢方についてお伝えしていくのも必要なことと感じます。

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