 福室 愛子さん
東京都大田区在住。研究開発機構勤務のち、退職して第2の人生、調理師専門学校へ入学。大手スーパー企画室勤務。食品会社フードコーディネーターとして商品開発プロデュースに携わる。フリーズドライ雑炊3種を商品化。義父の認知症介護のため、介護福祉士の資格取得。ケアマネージャの取り纏めや介護食に関わる。2010年頃から千葉の里山暮しを始める。四季おりおりの自然の中で食生活を学び、調味料のこと、ソウルフードについて知る。調理師専門学校時代、劉先生の講義がきっかけで薬膳の道へ。調理師、国際薬膳師、フードコーディネーター、介護福祉士、本会常務理事。

①劉先生との出会いが「薬膳」のきっかけということですが、
どんなところが興味深かったのですか?
今でもはっきりと覚えています。2009年4月24日の金曜日、先生は、当時私が通っていた調理師学校の教室に入ってこられると、まず黒板に「劉海洋」と名前を書かれて、その由来をお話し下さりました。次いで中医学の歴史から授業に入りました。1万8000年前の伝説の哲学者「盤古」の話、このとき先生は自分が太古の広い広い大地の真ん中に居ると思って聞いて下さいと仰り、卵の中に居た盤古が、卵から出て空と大地の間に立ち、卵の上半分の軽い部分が上昇して天と空<陽>となり、下半分の重い部分は下降して大地<陰>になったと陰陽学説の誕生から分かり易くお話し下さいました。先生のお話は、とにかく新鮮で心地よく私の中に響きました。自然との合体、同化に在るような身体への優しさは魅力的に思えました。
②里山の暮しを選ばれたのは、どうしてですか? また、自然の中で知り得た調味料のこと、
ソウルフード(郷土料理)について教えてください。
私も主人も東京生まれで、田舎と呼べるところがありません。いつか、田舎暮らしをしてみたいというあこがれの様なものがありました。10年程前に千葉の里山で「なんちゃって田舎暮らし」が、始まりました。そこでの暮らしは、九十九里浜の地引網漁で大漁のアジ、イワシから干物を作ったり、畠でトマトやナス、唐辛子、ピーマンを作ったりとミニ自給自足体験をしています。ご近所のご主人から教えて頂いた「とうぞ」(豆造)をご紹介しましょう。味噌を作るときに出る大豆の茹で汁に麹、干し大根、納豆、塩昆布等を合わせ、4~5日発酵させたものです。そのまま食べたりご飯にかけたりします。味噌の仕込み期間、千葉の市原から長生地域だけの保存食、ソウルフード、郷土の味です。
③介護福祉士のお仕事と薬膳に共通点はありますか?
同居していた義父が、認知症になりどの様に介護と向き合っていくのか分からず、介護福祉士の国家資格を取得しました。介護の中でも食事介護は、とても大切です。高齢になると、味が濃くなりがちです。また、咀嚼機能、嚥下機能も衰えてきます。食材の形は残しつつ柔らかく喉に詰まりにくい様な配慮が必要です。食を通して、未病のうちに薬膳の処方を心掛けることは、健康維持、増進に役立つと思います。
④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
理血類の黒木耳です。ビタミンD、食物繊維、鉄分が、豊富で生活習慣病の予防薬膳として、欠かせません。味はあまり有りませんが、乾燥物は戻すとコリコリ感が、生の物はプリプリ感が楽しい食材です。我が家では、中華サラダ、炒め物、スープ、酢の物が人気です
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⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
還暦前に薬膳を知り、同時に素晴らしい先生方、先輩方そして同じ道を学ぼうとする友人たちに出会えたことは、私の財産です。薬膳は、奥が深くてこれで終わりという事がありません。中医学を学んで10年、最近やっと少しづつ絡んだ糸がほどけていくように感じています。同時に楽しくなってきました。今後より一層薬膳に関する知識を深め、お美味しく身体に良い薬膳料理のレシピをたくさん考え、多くに方々に広めていけたらと思います。
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