 いのうえ ななこさん
東京都在住。飲食店の専門コンサルタント会社にて多岐にわたる業態のメニュープランニングに携わったのち独立。現在はフリーで商品開発、講師、執筆、セミナー企画などをおこなう。一方、エコール辻日本料理マスターカレッジで料理を学び、国際発酵食医協会の伝統発酵醸師の資格も取得。自宅で料理教室を主宰。季節の手仕事をはじめ、味噌作り、麹作りなどの発酵食、薬膳などを教えている。国際薬膳師

①薬膳を始められたきっかけはありますか?
まずは、子供に重度なアレルギーがあったことから、食生活を完全に見直し始めました。マクロビオティックスや発酵食、自然食、さまざまな健康食を学びました。そのうち、漢方や薬膳にも興味を持ち始めました。健康食は、基礎をつくることが多いです。または、除くこと。いけないものをとらない。それ対して薬膳は、必要なものをとる、という考え方だと思ったのです。叔母が認知症を発症したこともきっかけでした。「私に何ができるだろうか」「食べるもので何かできないか」との思いから本草薬膳学院の入学を決めました。
②発酵と薬膳で、共通の特徴や、両分野の内容で食養生に生かせることはありますか?
発酵は、微生物です。発酵しているものは、消化が良くなっており、また微生物を食べることで、腸内環境をよくします。発酵食を食べることは、胃腸に負担をかけない、疲れさせない、ということです。身体が弱っていて、補気をしようと鶏肉をたべようとしても、消化できなければ、補気すらできません。発酵食は基礎ですが、発酵食で足りないものを補ったり、改善したりすることはできません。私は、発酵と薬膳、共に食養生に必要なものであると考えます。
③日常生活で使える発酵食品の簡単なレシピを教えてください。
今、話題の発酵食品とは、塩麴や甘酒でしょうか。塩麹は、塩と同じ感覚で使います。肉や魚に塩するように塩麴を使うと、たんぱく質が分解されやわらかく仕上がり、更に旨みも増します。おすすめレシピは、長ねぎのみじん切りに塩麴、ごま油を混ぜて冷蔵庫へ。きゅうりにかけても、豚肉を焼いたものにかけても、旨みたっぷりの「ねぎ塩麹だれ」の出来上がりです。簡単に発酵食品がとれます。
難しく考えないでください。味噌をはじめ、醤油、みりん、酒、全て麹を使った発酵食品です。昔からあるぬか漬け、これも乳酸菌などがいっぱい入った発酵食品です。保存料や着色料が入っていない本物の調味料を使用し、本物の漬物を食べ、できれば、1日1回お味噌汁を飲んでいれば、必要な発酵食は毎日とれるはずです。
④薬食同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
私にとって一番身近なものは「生姜」でしょうか。昔から生姜はよくとっておりましたが、生の生姜と、蒸して乾燥した生姜の効用が違うと習った時の衝撃は今でも忘れられません。
初夏に出回る新生姜を使用し、保存食を作る教室もおこなっておりますが、香りのよい新生姜と蜂蜜を使用したジンジャエールもその一つで。これはちょっとかぜぎみかな、というときなど、1年中お世話になっております。
⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
薬膳の資格は取りましたが、学べば学ぶほど、まだまだわかっていないことばかりです。実は、夫の会社はスパイスの食品メーカーで、単品の香辛料はもちろん、ミックスしたカレー粉や七味唐辛子なども扱っております。そんなことから、昨年、登録販売者の資格を取りました。今は、この資格も生かして何ができるのか、勉強しながら模索中です。 |