 麻木 久仁子さん
東京都在住。司会業、女優、エッセイスト、コメンテータなど幅広く活躍中。明るいキャラクターで幅広い年齢層から支持を得ている。二度の大病を経験して、病気と闘うのも日頃の食事を通して体調を整えることが大事と確信。薬膳の道へ。美彩薬膳教室主宰。人生、健康、暮らしなどをテーマにした講演も多い。「ゆらいだら、薬膳」「生命力を足すレシピ」等書籍多数。国際薬膳師、国際中医師。

①薬膳を始められて人生観で変わられたことはありますか?
2010年に脳梗塞、2012年に左右両胸に乳がんを発症しました。それまでは病気ひとつしたことがなく、健康には自信がありましたので本当に驚きました。高齢化社会においては、だれにでも加齢による病もあるでしょう。ですが、いざという時にも日頃から養生して、体調や体力の維持に努めていれば、病と戦うことができるでしょう。食を通じて体のメンテナンスをしていくために、どんな食養生が良いかを学びたいと思ったときに薬膳と出会ったのでした。
薬膳の基礎となる中医学は、人間の体もまた自然の理の中に存在することを改めて気付かせてくれました。季節とからだのバランス、心とからだのバランス、運動や睡眠など日常生活におけるバランスなど生活全体を見直して、余分なことは取り去り、良いことは取り入れて、何事もほどほどに、大きく揺らぐことなく、穏やかに生活していく。そこにおのずと心身の健康が育まれる。薬膳を学ぶことは「食養生」の範囲を超え、生き方全体を見直すことにつながりました。
②薬膳に対する評価や反応をどのように感じていますか?
4年前に国際薬膳師の資格を取得し、薬膳の普及活動を始めました。その頃は薬膳というと「体に良いけど美味しくなさそう」「手に入りづらい食材が必要なのでハードルが高い」「難しそうで億劫」などなど、良いことだとは思うけれど実践には至らないという声をよく聞きました。さて、どうやって薬膳を説明しようかと悩んだこともありました。が、この数年で劇的に空気が変わってきたのを感じています。「未病」への興味や理解が広がってきましたし、厳しい経済状況の中で頼りになるのは「健康」という意識も高まっています。メディアで薬膳が取り上げられる機会も格段に増えてきました。まだまだ続く新型コロナウイルスとの戦いにおいても、日頃の体調・体力が実に重要だと伝えられています。食と同時に生活全体を改善することを目指す「薬膳」の考え方は、ますます重要になるでしょうし、必要とされる時代になったと思います。
③薬膳教室で、わかりやすく伝えるために心がけていることはありますか?
現在、「麻木久仁子の美彩薬膳」という講座を主宰しています。生薬などを使わない普段の料理も、季節や体調、体質に合わせて食べれば薬膳となること、日々の家庭での食事も養生を意識すれば薬膳となることなどをお話します。「珍しい食材をふんだんに使った高級な薬膳レストランの料理が“F1ドライバー”だとしたら、日々の家庭の薬膳は“普通免許”。普通免許は誰でも取れますし、免許があれば無い時よりも格段に生活が便利になりますよね。食べるべきものを食べるべき時に食べるのが薬膳です。日常の食事は1日ごとにコツコツとからだに合わせて食べていくことが大事です。興味を持ったら、それからさらにどんどん勉強してみてください」とお伝えしています。
④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
何と言っても黒ゴマですね。肝腎を養うアンチエイジング 食材。何にでもふりかけたり、あえものにしたり、焼き物の衣にしたりして、日常的にたくさん食べるようにしています。
⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
今後はさらに薬膳を身近なものに感じていただくための活動に力を入れていきたいです。薬膳をさらに多くの方々に知っていただくため、薬膳のプロである国際薬膳師の皆さんのネットワーク作りに貢献できたら嬉しいです。
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