|  多根弘子さん
長崎生まれ、熱海在住。ご主人の転勤に伴い約10年間をパリ、スイスで過ごす。帰国後、伊豆を中心に農業のできる土地を探し、伊東市宇佐美に「たねころ山農園」(5500坪)の開拓開始。無農薬の果樹、原木椎茸、季節の野菜、薬草を育てる。乾燥果物、ジャム、薬草茶などの加工品も試作中、敷地の一部に巨大なピザ窯や料理教室ができるログハウスも設けている。国際薬膳師、国際中医師。

① 薬膳の勉強を始めたきっかけは?
今までに癌で苦しむ身内を4人看とってきました。特に23年前に父を癌で亡くした当時はまだインフォームド・コンセントの考え方が主流ではなく、大変悔いが残る結果となりました。その頃から医療に委ねるだけではなく癌であってももっと積極的に生きる為の選択肢を増やしたい…こんな想いが漠然と膨らんでいきました。特に介護食の大切さを感じ薬膳を学びたいと思いました。
②「たねころ山農園」はどうして始められたのですか?
スイスで過ごされたことと関係ありますか?
何よりも薬草や野菜、果樹などの健康に良い食べ物を栽培する事が目的でした。山では地下77mから豊富な地下水を汲み上げ、飲用水のみならず山中に張り巡らして作物を育てています。勿論、無農薬です。
スイスやフランスでの体験としてはアグリツーリズムが盛んで勉強になりました。中でも印象的だったのは当時小学生だった息子が夏休みに近くの牧場へ毎日通うプログラムでした。家畜小屋の掃除や馬の世話などをしながら時には馬小屋に泊まったり乗馬したりして仲間達と過ごしました。ひと回り逞しくなり、自信や責任感を身に付けた姿に大変驚きました。自然や動物を通して子供達が成長したこの時の感動は、たねころ山の野外活動場というもう一つのテーマを生むきっかけとなりました。
③ 5500坪の農園をほぼ一人で開拓されているということですが?
どのように管理運営されているのでしょう?
アスリートのように毎日山で肉体労働をしています。週末は家族も加勢します。また地元の職人さん達も頼りにしています。彼らからは山の事、木の事、道具の使い方から地域のあらゆる情報まで教えていただきました。台風で倒木が相次いだ時も、駆けつけてくれて大変ありがたかったです。
実は5500坪の敷地の内、下半分を開墾し上半分は雑木林のまま残しています。…と言うのは木々は太陽を浴びて育ち、その黄金色の葉が土を肥やし綺麗な水を育みます。倒木や枯れ枝はストーブに入れて炎となり温めてくれます。小さな山ですがここに居ると五行思想が唱える木火土金水の5つのバランスの大切さを実感することができるのです。
④ 食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
(石窯で焼く薬膳ピザのレシピがあれば、教えてください)
たねころ山で自然のエネルギーをいっぱいに持つ作物の中から二つ紹介します。
一つは開墾の為に切ったクヌギの木を利用して栽培する原木椎茸です。もう一つは無農薬みかんなど柑橘類です。元々みかん栽培をしていた山だったので樹齢40〜50年のみかんの木が今も頑張っています。これらの皮は見かけは悪いですがとても味が濃く好評です。採りたての美味しさは格別ですが、干し椎茸や陳皮に加工したり、更にはそれを粉末にして利用します。ピザ生地にも加えたりしますよ。
⑤「たねころ農園」の目指しているコンセプトはどんなことですか?
今後はどんな未来図をお持ちでしょう?
食べて学んで動いて健康になれるような場所…ざっくり言うと「生きる力を養える農園」をコンセプトとしています。敷地の一部にピザ窯やBBQ炉、ツリーテラス、料理教室も開けるキッチン付きログハウスなどがありますので、コンセプトを共有できる方々にはイベントやワークショップ会場としても活用してもらっています。私自身は暫く開墾に没頭して薬膳や中医学から離れていたので、もう一度学び直し農業に活かしていくつもりです。そして子供達を対象に林間学校を開催する事が当面の目標です。
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