 吉開有紀さん
東京都在住、医療・料理編集業に従事。ご主人の転勤に伴い約13年間、香港、シンガポール、北京在住。シンガポールで中国語を修得、NUS主催北京中医大学伝統中医栄養学コース修了。中国語翻訳業、中国政府認定高級中国茶芸師、国際薬膳師、国際中医師、「家族で楽しむ薬膳レシピ」「体質改善のための薬膳」(緑書房)編集協力、本会交流部理事

① 薬膳を始められたきかっけは?
西洋医学辞典の編集に関わっていた時、女性特有の悩みに西洋医学には限界が来ると漠然と感じ、中医学の考え方は必要と思っていました。もっとこの分野を深めたいという想いと、偶然に転勤先のアジアには薬膳が生活の中に根付いていて手の届く所にあり、理論的というより実践的に薬膳の世界に入っていったという感じです。香港で知り合った友人の家に初めて招かれた時、友人が「生理の後だから」と言って、ごく自然に、冷蔵庫から当帰と棗を取り出し、お茶を煎じ始めた時の光景は今でも鮮明に覚えています。
➁ 薬膳の本の編集に携わって感じたことは?
「効能」をレシピの柱とする薬膳は、食材の選択や分量、調理法などへの細やかな配慮がどれほど大切かを学びました。編集者として、手順や時間配分、調理上の安全面なども考慮します。自分で作ってみないと気づかないこともあるので実際に作ります。レシピを制作された方と共に、更に美味しく、読者の皆さんにとって一番作りやすい方法を見つけられた時は本当に嬉しいです。
③ 中国語が大好きということですが?
中国語を日本語にそのまま訳すと大分ニュアンスが変わることに気がついたのです。その違いが面白くて、中国語と日本語の2つの世界が持てたことに、「のめり込んだ」ということでしょうか。漢字という共通点があるにもかかわらず、日本語のあいまいさと中国語のダイレクトな表現の魅力に取り憑かれてしまいました。例えば日本語では人を見送るときに「気をつけてね」と言いますが、中国語は「慢走」(ゆっくり歩いてね)。この違いが楽しく、中国語に浸っているのが好きでした。これは中国語でレシピを読むときにも、考え方、料理法、食材の使い方の違いに現れるのではないか、と感じる時があります。
④ 食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
これから外気が更に乾燥する季節には「滋陰潤肺」の白きくらげを食べるとほっとします。白きくらげも思い出の食材です。シンガポールでお隣に住んでいたご婦人が、よく白きくらげをとろとろに煮たものを持ってきて下さいました。最近は国産品の入手が難しくなってしまった事が非常に残念です。
⑤ 今後はどんな未来図をお持ちですか?
これまで暮らした国々を再訪し、もう一度生活に根づいた薬膳を体で感じに行きたいです。そして日本料理と薬膳の考え方に自分なりの着地点を見つけたい、組立ててみたいと思っています。それから、中国茶。北京で中国茶を親身にご指導くださった師匠から、日本へ帰国する際に「ぜひ日本の方に美味しい中国茶を喫んでもらって欲しい」と託されたことを忘れてはいけないと思っています。これからも季節や体調、気分にあった美味しい中国茶と薬膳デザートを、周りの方達と一緒に味わう時間を持ち続けて行きたいと思っています。 |