料理研究家
冬木れいさん
栃木県生まれ。真言宗の寺に生まれ行事料理・郷土料理に興味。料理サロン・「大きな竈」を主宰。作り手の思いを大切にした新商品開発・プランディング。「体になじむ料理」を提案・薬膳指導。「江戸料理」をテーマにした講演・執筆。NHK「幕末グルメブシメシ」の江戸料理を監修担当。
①料理研究家になるきかっけは?
若いころの私は、面白そうなことをみつけては邁進するようなことを繰り返していました。ある日「これまで自分が持ちえた情報の中で、一番ボリュウムがあるものは何か?」と自問してみると、それが「料理」だったのです。それからは「料理」を暮らしの真ん中におこうと決めて、改めて「料理」に向き合っていきました。
②本草学を取り入れた江戸料理とは?
得意とする料理を「本草学をとりいれた江戸料理」と表現しています。江戸料理のシンプルな料理法に本草学の知恵をとりこんで、身体になじみ、身体を整える料理をつくっていきたいと思っているのです。薬になる多くが植物であったため「薬の本(もと)となる草」ということから「本草」と呼ばれたときいています。私自身も、植物になじんでその力をひとつひとつ料理に吸収していけたらいいなと考えています。
③NHK「幕末グルメブシメシ」は大変好評でしたが、お料理のエピソードは?
撮影現場でカット割りごとにジャストに料理を提供するという経験は「幕末グルメブシメシ!」がはじめてでした。映像料理は、ほとんどが見せ料理であって実際に役者さんがお口にいれることは少ないのですが、想定外でお口にはいることも間々ありました。そんなとき、「オイシイ!」のひとことをもらえたりすると、一気にテンションがあがります。私はもちろん、現場の雰囲気も和みます。これが食の力なんだなと実感する瞬間でした。主役の瀬戸さんから好評だったのは、「軍鶏鍋」です。これは、軍鶏一羽をあらほどきにして、ガラからスープをとって、もも、むね、もつを煮込んで醤油味に仕立てます。千住葱をあしらい、キンカンの黄色が映えるようにと数秒の火入れ時間を見計らってつくった渾身の一品でした。
④食薬同源、おすすめの身近な食薬を教えてください。
こえんどろ(コリアンダーシード)が夏のおすすめ食薬です。軽くつぶして冷水にいれ一晩つけておきますと、爽やかな香りの飲み物になります。発汗により身体を涼ませ、脾胃の機能も高めてくれるので愛用しています。使用済みの種は、そのまま土に埋めておくと、発芽しますので、とてもよい循環となるところも気に入っています。
⑤今後はどんな未来図をお持ちですか?
江戸料理に向き合う日々の中で思うことは、食べ継がれてきた料理の美味しさの確かさと、作りやすさです。また、忍者の食をたどっていくと、忍者がかなり本草学に詳しいこともわかってきて、なおさら、本草学と江戸料理が結びついておもしろがっているところです。忍者食「飢渇丸」が、現代においても通用する有効なサプリメントになるように、美味しくつくってみたいな!などと夢想しています。そんな江戸料理のあれこれの魅力を、皆さんにお伝えするお役を担えたらうれしいですね。 |