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「同じ病気なのに、なぜ私とあの人で治療法が違うんだろう?」そう思ったことはありませんか?『黄帝内経』には「異法方宜論」という章があり、「同病異治」という考え方が書かれています。これは、「同じ病気でも、住む場所によって治療法を変えるべき」という考えの始まりです。つまり、同じ症状でも、体質や生活習慣、季節、住んでいる場所によって、一番良い治療法は違う、ということです。
これは、食養生についても同じです。昔ながらの養生の知恵は、四季の変化を軸にした、美しい織物の「縦糸」のようなものでした。春には苦味のある山菜で冬に溜まったものを出し、夏はキュウリやトマトで体を冷やし、秋はサツマイモでエネルギーを蓄え、冬は鍋で体を温める。このように、季節に合わせた食生活が、自然と体を整えていたのです。
しかし、今はどうでしょう?冷蔵庫を開ければ、季節に関係なく世界中の食べ物が手に入ります。スーパーに行けば、いつでも同じような野菜が並んでいます。それに、今は引っ越しも珍しくありません。北海道で生まれ育った人が、仕事で沖縄に住む、ということも普通です。そこで大切になるのが、「因地養生」という考え方です。これは、四季という縦糸に、地域という横糸を織り交ぜた、自由な養生の考え方です。
例えば、こんなことはありませんか?東北で育った人が、九州に引っ越して体がだるい。これは、寒さに慣れた体が、九州の暑さに対応できていないサインです。そんな時は、地元で昔から食べられているゴーヤなどを試してみましょう。これらの野菜には、体の熱を冷ます力があります。逆に、暖かい地域から寒い地域に移った人は、根菜や発酵食品が役に立ちます。大根やニンジン、納豆や味噌などは、体を温め、寒さに負けない体を作ってくれます。
つまり、「今、どこで、どんな生活をしているか」が大切なのです。子供の頃から食べていたものを大切にしながら、今住んでいる土地の旬のものを食べる。その土地の人が「おいしい」と言って食べているものには、ちゃんと理由があります。その土地の気候に合った食べ物には、そこで暮らす人の体を健康に保つ知恵が詰まっているのです。
季節という縦糸と、地域という横糸。この二つを意識して、自分の体調や生活に合わせて作る養生は、まるで自分だけの曼荼羅のようです。完璧を目指さなくても大丈夫です。「今日は体が熱っぽいな」と感じたらスイカを食べる。「少し寒いな」と感じたら、生姜をすりおろして味噌汁に入れる。そんな小さな気付きを積み重ねることが、一番の養生になるはずです。あなただけの養生曼荼羅を、一緒に作ってみませんか?
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蒋寒先生のプロフィール:
北京中医薬大学卒業後、8年間脳卒中および頸髄損傷の治療・リハビリに従事。日本中医協会会員。信条は「学びは自由への道」、中医学の普及と発展のために活動している。 |
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