因地制宜とは、住んでいる地域の気候や生活環境に応じて、治療に使う生薬、食材も変えるという治則です。日本列島においても、日本海側と太平洋側、北海道と沖縄ではそれぞれ土地の特性はがらりと変わります。地理的特徴の違いによって、用いる食材や薬剤を違えていきます。
『素問・五常政大論』には「地有高下、気有温涼、高者気寒、下者気熱」とあります。即ち、「地域には高地と低地の違いがあり、気候には気温の違いがある。高地では気候が寒く、低地では気候が暑い」。また、「西北之気、散而寒之。東南之気、収而温之。所謂同病異治也」とあります。即ち、「西北の気候は寒いので、温めて寒を散らす。東南の気候は温かいので、冷やして温を収斂させる。このように同じ病いでも治療法が異なる。」例えば、同じ風寒症であっても、厳寒地域においては辛温解表の効果を強めるため、麻黄や桂枝が選ばれ、温熱地方では、辛温解表の効果を弱めるために荊芥、防風を使うことが多いようです。『素問・異法方宜論』には、「一病而治、各不同、皆愈、何也。岐伯対曰:地勢使然也」とあります。即ち、黄帝が問う「医師が疾病を治療するとき、同じ病気に対して各種の異なる治療の方法があり、そのいずれの場合でも結果的には治療しうるということは、どのような道理によるものであろうか。」岐伯が答える。「それは、地理、形勢の相違によって、治療方法にも各々にふさわしいものがあるからです。」の示すとおりです。
執筆者:冬木れい 国際薬膳師 料理家
参考文献:『全訳 中医基礎理論』 たにぐち書店/『黄帝内経素問 上巻—現代語訳』東洋学術出版社/『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』東洋学術出版社
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