季節の変化、気候の変化は、私たちの身体の生理機能や病理に少なからず影響します。「因時制宜(いんじせいぎ)」とは、治療につかう薬物や飲食物を選ぶ際、季節や時候の変化の特徴を考慮して柔軟に対応することをいいます。
『素問・六元正紀大論』には、「用寒遠寒、用涼遠涼、用温遠温、用熱遠熱、食宜同法」とあります。即ち、「寒性の薬物を使うときは寒い季節は遠ざける。涼性の薬物を使うときは涼しい季節は遠ざける。熱性の薬物を使うときは暑い季節は遠ざける。飲食物を摂取するときの原則も同じである。」と説いています。
秋から冬にかけて清涼な気候から寒さが増していくときは、陽が衰え、陰が盛んになります。腠理が緻密になって陽気が内に収斂するので、この季節に寒涼の薬物や飲食物は注意して用いないと、陽を傷つける可能性があります。また、風邪の処方も、春季の風温には辛涼解表、冬季の風寒には辛温解表、秋季の乾燥した気候の際には辛涼潤燥の薬物を使って治療をします。
また、私たちの身体は地球の自転や公転と連動した複雑なリズムを持っているので、時間帯による身体変化を意識し対応することも必要です。さらに地球規模での気候変動が心配される今日においては、激しい気候の変化を注意深く観察し考慮していくことが非常に重要になります。状況に応じて薬物、飲食物を選び、臨機応変な対応、調整が求められます。  

執筆者:冬木れい 国際薬膳師 料理家
参考文献:『素問』新釈 小曽戸丈夫,小曽戸洋 たにぐち書店/『全訳 中医基礎理論』戴毅(監修)、淺野周(翻訳)、印会河(主編)、張伯訥(副主編)たにぐち書店


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