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一つの臓が発病すると、他の臓に伝変する。発病した臓のみを治療するのではなく、五臓同士の相互関係を調整し、全体をみて整えようとするのが、中医学の大きな特徴です。病気の伝変・診断には相生・相剋関係をみていきますが、治療にも相生・相剋関係を用いていきます。相生関係を用いた治則は、「虚者補其母、実者瀉其子」(虚していれば、母に当たるものを補う。実していれば、子に当たるものを瀉す)。中国古代の医学書『難経 六十九』に示されているところです。例えば肝が弱っている場合、肝だけを補うのではなく、母である腎を補うことで、子である肝はより整いやすくなります。相剋関係を用いた治則は、五臓のうちあるひとつが、機能亢進したか、機能減退することで引き起こされた状況を、強すぎる臓は抑え、弱すぎる臓は助けることで治療します。またこの治則は、予防のためにも使われます。例えば肝脾不和証の場合、「肝」が過剰に「脾」を虐げると、肝の病が脾に伝わり、消化器系の諸症状があらわれるので、脾を事前に整えて伝変しないように予防していきます。『難経 七十七』に「見肝之病、則知肝当伝之於脾、故先実其脾気」(肝の病は脾に伝変すると知って、あらかじめ脾気を充実させておく)の示すとおり、未病を治すテクニックです。
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執筆者:冬木れい 国際薬膳師 料理家
参考文献:
『難経解説』南京中医学院編 戸川芳郎(監訳)
『中医学の基礎』平馬直樹、兵頭明、路京華、劉公望 東洋学術出版社
『全訳 中医基礎理論』戴毅(監修)、淺野周(翻訳)、印会河(主編)、張伯訥(副主編)たにぐち書店
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