Vol.018 麻木久仁子さん
プロフィール:1962年生まれ。50歳を目の前に脳梗塞と乳がんを患う。それを機に食生活の改善に取り組み、本草薬膳学院にて学ぶ。2015年国際薬膳師、2019年国際中医師、2022年に医薬品登録販売者の資格を取得。著書に『ゆらいだら薬膳』『おひとりさま薬膳』『生命力を足すレシピ』など。メディアに薬膳レシピを提供したり、薬膳教室を開催するなど、薬膳の普及活動に取り組んでいる。2025年より日本国際薬膳師会資格認定機構役員。


元々病気知らずで健康自慢だった私が、50歳を目前にして脳梗塞、乳がんと立て続けに患ったことが、健康管理について真剣に取り組むようになったきっかけでした。中でも食事の大切さを痛感し様々な食養生について調べている中で出会ったのが薬膳でした。初めて本草薬膳学院の授業を見学した日のことを今でも良く覚えています。それまで全く縁のなかった中医学でしたが、その論理にすっかり魅せられたのでした。あくまでも自身の健康維持のために学び始めたのですが、縁あって薬膳教室主催のお話をいただいたり、本の出版を勧められたりと、この10年で活動の場も広がってきました。特にこの数年はコロナ禍の影響や「健康寿命」への関心の高まりもあって、薬膳への注目がかつてなく高まっているのを感じます。薬膳についてお話しさせていただく機会もとても増えました。
高齢化社会、長寿社会というのは「健康という日常と、病気という非日常」があるのではなく、誰もが「何かしらの不調を抱えつつもその人なりに健やかな日常を生きる」という時代なのだろうと思います。西洋医学は発展し続けていますが、「未病を如何に癒し、生活の質をととのえ、最後まで自分らしい生を生きるか」という問いには答えきれません。だからこそ中医学をはじめとして東洋医学の知恵に注目が集まっているのでしょう。そんな中で「薬膳」の役割もますます重要になってきていることを感じます。日本国際薬膳師会の仲間たちとともに、薬膳生活についての発信の場を広げていきたいというのが今の私の目標です。
2年前から放送大学に選科履修生として入学し、主に健康にまつわる制度や社会システムに関する講義を受けています。人々の健康というものは個人の自助努力のみならず社会環境からも大きく影響を受けるからです。今の日本社会において、どのような形で薬膳が役立てられるか、多角的に視野を広げ、これからの情報発信に繋げたいと思っています。日本国際薬膳師会がよりそのためのより大きなプラットホームになるよう、みなさんと繋がっていけたら幸いです。