Vol.009 工藤 恵さん
プロフィール:1979年生まれ、埼玉県出身、東京都新宿区在住。大学卒業後、2002年に共同通信社に入社。野菜ソムリエ、フードコーディネーター、国際薬膳師。本草薬膳学院の辰巳洋学院長の協力を得て、薬膳料理の連載「はじめよう、薬膳ライフ」を編集。全国の地方新聞に掲載中。


旅に出かけて初めての土地に降り立つと、においや音、景色、雰囲気、その場所ならではの食事の味などがどれも新鮮に感じられて、なんだか五感が鋭くなるなと思ったことはないだろうか。
私は普段、新聞記者として仕事をしている。2002年に入社し、北九州、福岡、盛岡、仙台での赴任先では、事件や裁判を主に担当。10年に本社編集局文化部へ異動し、テレビやファッション、シニア、働き方改革、演劇などの担務を経て、現在は主に食を担当している。
日々人と接する仕事をしているので、日常で大事にしているのは「これは何だろう」という好奇心、「なぜこんなことが起きているんだろう」という問題意識、そして、自分が持っている直感だ。何がニュースなのか、これは正しいのか間違っているのかという判断が必要なため、知識や教養とともに感性も常に問われる。
薬膳の勉強をして資格を得て、直接役に立っていると胸を張って言えることは現時点でそれほどないが、人間の五感に興味を持ってこれまで学んできた色(視覚)や香り(嗅覚)、キャリアコンサルタント(聴覚)の知識は、人との対話で非常に役立っている。そして、人と接する際に互いが「時間を共有できて良かった」と思えるよう、触覚を磨き続けている。
私は記者の仕事の傍ら、キャリア教育の一環として、中高生に自分自身の生い立ちや仕事の話をする機会がしばしばある。その際、彼らに必ず伝えているのは「本物に触れてほしい」ということ。伝聞ではなく、自分の体で感覚を得て、自分なりの表現で言葉にしてほしいと思っている。
これまで、公私ともに多くの人の協力や助けを得て生きてこられたので、自分が得た知識や経験を他の人にお裾分けしたいという思いを持っている。
五つの感覚の中で、特に生きることと直結しているのは味覚だろう。薬膳を学んだことで、自分の健康もさることながら、家族や友人、周囲の人たちにも「医食同源」の意識を養ってもらい、新鮮な旬の食材で心身ともに健やかな生活を送ってほしいと心から願っている。 |
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