2024.05
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反本丸(へんぽんがん) 牛肉 東京(江戸料理)
分 類:補気類
性味/帰経:平、甘/脾、胃
働 き:益気補脾・養血強壮
紹 介 者:日高和子
先日、江戸料理を食べる機会がありました。 江戸料理とは、江戸時代に江戸で発達した料理の総称で、今日では東京の郷土料理ともいえるそうです。そのお料理に色々名前があることに驚きました。まず席についていただくのは「座付き(ざつき)」、季節ごとにかわるそうですが、今回はしじみと蕎麦の実の汁物。お造りはお魚の小袖きり。小袖きりとは、着物の袖に見立てた斜切りのこと。遊び心がある粋な名前の付け方ですね。そして今回ご紹介したい「反本丸(へんぽんがん)」、江戸時代獣肉を食することは禁じられていましたが、李時珍の著書「本草綱目」に「黄牛の肉は佳良にして甘味無毒、中を安んじ気を益し、脾胃を養い腰脚を補益す」との記述があることを大いに利用して、牛肉の味噌漬けを薬と称して食べていたというのです。当時、牛肉は「反本丸」という薬だったのですね。現在は牛肉として堂々と食べることが出来ますが、食薬同源、健康維持の中薬でもあるのです。 |
2023.08
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おいねのつる芋(ジャガイモ) 東京檜原村
分 類:補益類
性味/帰経:平、甘/胃、大腸
働 き:補気健脾
紹 介 者:小林紀美子
東京都檜原村で採れる「おいねのつる芋」は、江戸時代に伝わったとされる伝統のジャガイモです。昔、おイネさんが山梨から種芋を持って檜原村に嫁入りをし耕作したというのが名前の由来です。つるは蔓ではなく、山梨県の都留の地名から来ています。 飢饉に強く、食料不足の時代には副菜だけでなく保存食の役割も担っていたそうです。今では、原種に近い貴重なジャガイモとして「江戸東京野菜」に認定されています。サイズは小さくお味は濃く、個性豊かな風味ですが、どこかで堪能したお味でした。それはペルーのマチュピチュでした。プチホテルで1日3食いただいたジャガイモのお味でした。固有種の持つ力強い風味は、身体に染み渡るような補気力を感じました。ジャガイモのルーツはアンデス山脈ですが、今でも原種のジャガイモが3000~5000種類と残っているようです。農家の方々が代々と栽培してきた貴重な種を守り受け継いでいます。日本のようなF1やGMO、ゲノムなどはありません。「おいねのつる芋」も、独特な美味しさを守り、貴重な種を守り、未来に受け継いでほしいと願っています。 |
2022.12
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秋川牛(あきかわぎゅう):東京都
分 類:補気類
性味/帰経:平、甘/脾、胃
働 き:補脾胃、益気血、強壮
食材紹介者:小林紀美子
六本木のホテルダイニングで人気の高い「けやき坂ビーフ」。それは「幻の東京和牛」とも呼ばれる東京都唯一のブランド牛、「秋川牛」です。東京都あきる野市の里山で飼育され、新鮮なまま都民に届けられる身土不二な黒毛和牛です。飼育には秋川渓谷近くの湧き水を使用し、飼料は単にワラだけでなく、とうもろこし、麦などを与え、一般的に使われるホルモン剤や抗生物質は与えていません。牛舎内は特別なオガ粉を敷きつめ清掃を保ち、牛たちは自然なままにストレスなく健康的に育ちます。「秋川牛」の肉質はきめ細やかでツヤがあり柔らかく、旨味があり香りの良さが特徴です。我が家の特別な日のご馳走となっています。 |
2022.08
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寺島茄子:なす(東京都)
分 類:理血類
性味/帰経:甘、涼/脾、胃、大腸
働 き:清熱、活血止血、消腫、利尿、
健脾和胃
紹 介 者:小林紀美子
夏野菜のおいしい季節です。東京・立川市では、「江戸東京野菜」の一つである「寺島ナス」の収穫が始まっています。「寺島ナス」は将軍も食した江戸の銘品といわれ、当時の栽培風景は歌川広重の浮世絵にも描かれています。関東大震災後に生産が途絶えていましたが、2009年に復活し「江戸東京野菜」としても認定されて、再び味わえるようになりました。
特徴は、〝形は小なれども早生なすと呼び賞美す〟と当時の風土記にあるように、小ぶりで、なす特有の香りがあり、黒紫色した実はずっしりとしています。他の品種に多い柔らかいふわふわとした食感とは違い、肉質は締まり、皮がかためで存在感があります。美味しいです。 |
2021.2
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キウイフルーツ 東京都三鷹市
分 類:清熱瀉火類
性味/帰経:寒、酸/腎、胃
働 き:補解熱止渇 降逆和胃
食材紹介者:大須賀道子
国産のイメージが少ないかもしれませんが、三鷹市はキウイの生産が盛んで都内では1位、市内の直販所などで購入できます。直販で購入できるものは、追熟されており、買ってすぐに完熟したものをおいしく食べることができるのも魅力です。緑肉系と黄肉系のものをよく見かけますが、赤肉系でレインボーレッドという中央が放射状に赤く、回りの果肉が黄色のものもあります。キウイはクリームチーズとサンドイッチにすると甘すっぱさがマッチして美味しいですよ。ビタミンCはミカンの2倍、たんぱく質分解酵素があり、少し固めのお肉もキウイと一緒に浸けておくと柔らかくなります。中医学的には口の渇きを癒したり、内臓のバランスの調整といった働きがあると考えられています。 |
2020.09
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まちだシルクメロン(甜瓜) 東京都町田市
分 類:清熱類
性味/帰経:寒・甘/心、脾、胃、肺、大腸
働 き:清熱祛暑・解煩止渇、祛湿止痛・
利尿消腫
食材紹介者:日高和子
東京都町田市で、「メロンを生産している」と友達から聞いて驚きました。茨城のアンデスメロンや北海道の夕張メロンが有名ですね。メロンと言えば天候の影響を受けやすく作るのが難しい高級品のイメージでした。それを水耕栽培によって「地域密着型の新しい高付加価値的農業=町田式新農法」として実現させたそうです。一株から1~3個ほど言われている収穫が約40個を実らせることが可能になり、舌触りも上等ななめらかでみずみずしい「まちだシルクメロン」が完成。メロンには、熱と暑さを取り除く働きがあり、のどの渇きを止めます。利尿作用により余分な水分を排出させるので、むくみの改善も期待できます。 |
2020.08
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あだち菜(小松菜) 東京都足立区
分 類:滋陰類
性味/帰経:温・辛・甘/肺・肝・胃・大腸
働 き:養陰潤躁、利肺鎮咳
食材紹介者:河本壽恵乃
足立区は江戸時代から野菜作りが盛んであり「野菜を食べよう」キャンペーンに伴い栄養価の高い足立産の小松菜を「あだち菜」と名つけ、ブランド化して学校給食などに積極的に取り入れています。小松菜、春菊,ほうれん草などの青菜はビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富です。小松菜は中でもカルシュウムが多く含まれます。またβカロテンも豊富でがん抑制にも効果があります。
献立を1つ紹介します。
「小松菜と海老の黒胡麻酢」(2人分)
小松菜1/2把・むき海老60g・黒胡麻10g・酢・砂糖・醤油
冷えがある場合・冬など唐辛子を加えます。 |
2019.07
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小茴香(ショウウイキョウ) 東京都調布市
分 類:温裏類
性味/帰経:温・辛/腎・脾・胃
働 き:散寒止痛、理気和胃
食材紹介者:冬木れい
小茴香は、平安時代、中国から渡来した生薬。種子は甘い香りと苦みが特徴で、消化促進消臭に効果があり、今も安中散、太田胃散、仁丹などに配合されています。食材としては、香辛料=五香粉の原材料のひとつで、またカレーやピクルスのスパイス=フェンネルとしても馴染んでいます。最近、種子だけでなく生の葉や鱗茎部分も、夏野菜として出回るようになりました。調布市の直売所には小茴香の株が青々と並んでいます。魚料理、サラダ、スープなど香りづけや、葉を刻みいれ餃子の具にしても美味。葉はドライ保存も可です。 |
2018.07
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タカベ(スズキ目タカベ科) 東京都
分 類:補虚類
性味/帰経:平(温)・甘/脾、胃、肝、腎
働 き:補脾益腎、止咳、利尿、安胎、
食材紹介者:小林紀美子
暑い夏、ヨットのベストシーズンの到来です。大島、新島などの伊豆諸島に繰り出します。1日のセーリングを終えて、ハーバー近くのお寿司屋さんに向かいます。「1番、美味しい焼き魚は?」と尋ね、勧められるのがタカベです。
タカベはスズキの分類に入り、初夏から夏にしか味わえない小さな魚です。脂ののりが良い魚ですが、この時期は更に脂がのる為、塩焼きが最高と地元の魚屋さんも勧めてくれます。平安時代の句に、「中秋の名月を見ながら、たかべの塩焼きを肴に酒を呑むことはこのうえない贅沢である。」と詠まれたほどのようです。
タカベは、伊豆諸島で獲れ『東京都産』で販売される数少ない魚です。潮通しの良い岩礁域の浅瀬で群れをなして泳ぎまわり、体長25cmほどのきれいな青い姿はダイビングでも楽しめます。 |
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